本箱 |
作者 | 書名 | 出版社 | この一行 |
浅倉 卓弥 | 四日間の奇蹟 | 宝島社 | かつて持っていたはずなのに失くしてしまったものって(略)切ない、ですよね。若さとか、さ。でも、そこにいつまでもこだわっていたら(略)いま持っているものに価値が見出せなくなる。 |
浅田 次郎 |
姫椿 | 文芸春秋 | 「よさそうな人じゃないですか」「よさそう、じゃなくって、とてもいい人よ」うん、と父は声に出して肯いた。「価値観がちがうというのは、実にいいことなんですね。意外な発見だけど」「そういうことって、あんまり関係ないんじゃないかな。いい人は誰にとってもいいひとなのよ」 |
歌野 晶午 | 葉桜の季節に君を想うということ | 文芸春秋 | 覚醒剤は合法ドラックであった。(略)新聞で広告が打たれ、町の薬局で簡単に手の入った。(略)当時はヒロポンという商品名で呼ばれていたこの薬が、わが国のめざましい復興の一翼を担ったことは間違いない。 |
江川 晴 | 婦長物語 | 読売新聞社 | (略)まだ呼吸していて心臓が動いているのに「脳死は死である」と言って死亡宣告をして(略)お年寄りで心停した人を再び呼吸器につないで延命させる。(略) |
太田 哲也 | クラッシュ | 幻冬舎 | 寅さんが映画の中で言っていた台詞が印象的に感じた。「人間一度ぐらい生きていて良かったと思う時があるだろう。そのために生きているんだ。」 |
小川 洋子 | 博士の愛した 数式 | 新潮社 | 彼はルート(注・この本に登場する子供のあだ名)を素数と同じように扱った。素数がすべての自然数を成り立たせる素になっているように、子供を自分たち大人にとって必要不可欠な原子と考えた。(略)折にふれ、私はメモを取り出して見つめる。(略)そこに書かれた一行の偉大さの前で頭を垂れる。 |
小川 洋子 | ブラフマンの埋葬 | 講談社 | 自分が安堵している本当の理由が何なのか、僕には分かっていた。(略)僕を見捨てる為に、ブラフマンが森を走って行ったわけではないと、はっきりしたからなのだ。 |
奥田 英朗 | 空中ブランコ | 文芸春秋 | 「ホットコーナー」 最初からできて人間は、自分がどうしてそれができるかを考えないんだ。 |
荻原 浩 | ハードボイルド・エッグ | 双葉文庫 | |
加賀 乙彦 | 夕映えの人 | 小学館 | |
角田 光代 | あしたはドロミテをあるこう | 岩波書店 | 歩くだけで、眼にみえるものがどんどん変わる。(略)滝も、岩も、木々も、山々も、風も、みんなつねにそこにあるが、自分の足で向かわなければ、出会うことはかなわない。 |
梶尾 真治 | 黄泉がえり | 新潮文庫 | 「この数日、自殺者の数が増えはじめた」(略)「身体を患って死を待つより、一刻も早く健康体で黄泉がえりたいってな。人間の死生観そのものが変わりよっとたい」 |
片山 恭一 | きみの知らないところで世界は動く | ポプラ社 | 「アメリカまで行くつもりかい」ジーコは海を見てしばらく考え込んでいた。ぼくの言ったことを真剣に検討しているようでもあった。それから「誰もアメリカへは行けないんだよ」と言った。 |
さだまさし | 解夏 | 幻冬舎文庫 | 「秋桜」より 「蜂はな、巣を襲ってきた敵を迎え撃つのは年寄りの役目なんだに」(略)「ほら、蜂は尾の針で刺したら、死んでしまうだろう?(略)もうすぐ死んでしまう年寄りの蜂から攻撃することになっとるんだに」 |
沢木耕太郎 | 無名 | 幻冬舎 | 差引けば仕合はせ残る年の暮れ |
重松 清 | ビタミンF | 新潮社 | |
重松 清 | ナイフ | 新潮社文庫 | |
重松 清 | 哀愁的東京 | 光文社 | 忘れるという能力を人間が授かったのは、もしかしたら、この世界には「忘れたい」出来事が多すぎるから、と神様がみぬいていたせいなのかもしれない。 |
重松 清 | 卒業 | 新潮社 | 「追伸」 (略)いまならわかるのだ。それくらいのことは、簡単に(略)死んだ人に負けたくなっかたのかもな、と苦笑も浮かぶ。もうやり直せないとあきらめてから、色々なことがわかるようになる。あきらめたから、わかるーのかもしれない。 |
新堂 冬樹 | 忘れ雪 | 角川書店 | 私の人生はお前の物ではなく、お前の人生はわたしの物ではない。 |
曽野 綾子 | 飼猫ボタ子の生活と意見 | 河出書房 | チータが単独で月光の中を歩いていた、(略)寂しくても寂しいとは言わない。それが分際を知るものの姿です。(略)でも泣くときは声を立てずにお泣き、ともいわれたんでしょうね。 |
ダニエル・ キース |
アルジャーノンに花束を | 早川書房 | 独善、尊大ーーー教授のことを殴りたくなった。「僕は手術前も人間でしたよ。もし先生が忘れていらっしゃるのならー」 |
天童 荒太 | 遭難者の夢 | 新潮文庫 | 「(略)ゲームセンターで消える程度の金を目当てに、どうして他人の人生をぼろぼろにするんだよぉ」(略)街の情景を眺めた。たとえば世界かくちの紛争地域に比べれば、平和で、暴力や悲しみが満ちているとはとても見えない。だが(略)悲劇がふりかかった当事者には百パーセントの現実だった。 |
天童 荒太 | 贈られた手 | 新潮文庫 | 社会をよくしたい、平和を求めたい、平等でありたい・・考えそのものには賛成でも、具体的な方法が話されはじめると、急に怪しい人間ではないかと疑うことが、癖のようになっていた。国民性なのか、教育や習慣によるものか(略)テレビや新聞などのメディアの論調、もしくは映像の力などによって、知らぬ間に形作られたものかどうかは、よくわからない。 |
天童 荒太 | 巡礼者たち | 新潮文庫 | 他人のことはわからない。過去のことなら、なおさらだ。だったら、人間が少しはましに思えるほうに考えたほいがいい。人を信じたくなるほうに・・・・・・ |
天童 荒太 | まだ遠い光 | 新潮文庫 | 風が出たのか、桜庭が柔らかく揺れている。また明日と言われた気がした。今でも子どもたちは言い合っているのだろうか。単純だがこれ以上ない言葉だと思い、うなずいた。ああ、また明日だ。 |
藤堂志津子 | 秋の猫 | 集英社 | |
中野 順一 | セカンド・サイト | 文芸春秋 | |
蓮見 圭一 | 水曜日朝、 午前三時 |
新潮社 | 若い頃は共和国に戻ろうと思って、貯金までしていたんです。(略)そのうち気が付いたんです。私の故郷は他のどこでもなく、女房と三十五年間暮した、この街なんだとね。 |
藤沢 周平 | たそがれ 清兵衛 |
新潮文庫 | 「だんまり弥助」 夫が無口だと、妻の口数はどうしても多くならざるを得ない。(略)おや、わたしはいつからこんなおしゃべりになったのだろうと自分をいぶかしむのである |
宮部みゆき | 誰か | 実業之日本社 | 彼女もわかっていたのだ。(略)それでも、誰かの口からそう言ってほしかったのだ。わたしたちはみんなそうじゃないか?自分で知っているだけでは足りない。 |
宮本 輝 | 月光の東 | 新潮文庫 | 生の数だけ死がある・・・・。そんな当たり前のことすら、私たちはわかっていない、 |
星宿海への道 | 漢人の公安刑事は冷笑を浮かべ、日本人を好きな中国人なんてこの中国中にひとりもいないと言い返してきた・・・ | ||
山田 宗樹 | 嫌われ松子の一生 | 幻冬舎 | 他人同然だと思っていた松子伯母だが、荒川を見て泣いていたことを聞かされてからは、(略)俺だってあの光景を見たら、故郷の筑後川を思い出してたまらない気持ちになる。 |
山田 太一 | 君を見上げて | 新潮社 | |
弥太郎さんの話 | 新潮社 | ||
山本周五郎 | 五瓣の椿 | 新潮文庫 | |
山本周五郎 | 季節のない街 | 新潮文庫 | 「枯れた木」より。 人の住んでいる家はいきているようにみえるものだ。住んでいる人によっては、その家が性格をそなえているようにみえる場合さえある。 |
山本周五郎 | 柳橋物語 | 新潮文庫 | (略)良い仕事をする人間はそうたくさんいるもんじゃあない。(略)ほんとうに良い仕事をする人間はいるんだ。いつの世にも、どこかにそういう人間がいて、見えないところで世の中の楔になっている(略)、 |
山本周五郎 | 赤ひげ診療譚 | 新潮文庫 | 「医術がもっと進めば変わってくるかもしれない。だがそれでも、その個体の持っている生命力を凌ぐことはできないだろう」 |
山本 一力 | 蒼龍 | 文芸春秋 | 「のぼりうなぎ」より。「明けない夜はないという喩えもある。(略)庇い立てはできないが、あせらずに、おまえらしさを見失わないでいなさい。」 |
横山 秀夫 | 第三の時効 | 集英社 | 午前1時を回った。(略)ゆき絵は畳に体を横たえた おずおずと夏掛けを胸元まで引き上げ、 |
顔 | 徳間書店 | 「君は警察が好きか?」瑞穂は息を呑んだ。(略) 今にも悔し涙が溢れそうだった。「婦人警官の職務に誇りをもっています。 |
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